Taipei Utopia Montessori Elementary School
台湾の台北市にある、Taipei Utopia Montessori Elementary Schoolをご紹介します。
これまで3-6歳の幼稚園を10年以上運営してきたオーナーが、4年前に開いたモンテッソーリの小学校です。6-12歳までの一クラスで、約25人。毎日8時から17時半まで通っています。
外観
モンテッソーリ教育が行われている小学校は、この建物の一階のワンフロアにあります。
右下にはとても大きなパキラ。ビルですが、緑がたくさん置かれていますね。
モンテッソーリ小学校・エントランス付近
門をはいると・・・
家庭的な、あたたかい雰囲気の玄関スペースです。ペットとして飼われているワンちゃんがエントランスで出迎えてくれます。
入って左側の部分です。
ガーデニングスペースもある、エントランス付近のウッドデッキ。
小学校で育てている植物。
それでは、中に入ってみましょう!
教室の様子
キッチン
玄関を入ってすぐ横はキッチンです。
ここで、毎日お当番二人がクラス全員の給食をつくります!
キッチンのテーブルは、子どもが朝ごはんやスナックを食べることのできるスペースです。
水回りにはタイルが貼られています。全て、生徒の保護者がデザインしたものだそうです。
教室全体
3-6歳のクラスでは、「日常生活」「感覚」「言語」「数」「文化」でしたが、6-12歳では、「言語」「幾何」「数」「地理」「歴史」「生物」「美術」「音楽」など様々な分野を幅広く学んでいきます。
6-12歳までの年齢差のある、ダイナミックな縦割りのクラス編成に対応した、環境。
グループや個人でそれぞれが集中して取り組めるように、机やいすが配置されています。
実際に子どもたちが来て、熱心にお仕事に取り組むその様子は、例えるなら、オフィスです!
植物学や生物学の棚の横では、金魚も飼っています。
勿論、お部屋の中には子どもたちがモンテッソーリの幼稚園(3-6歳)でそれまで親しんできた、感覚教具や数教具の一部もあります。
3-6歳では、感覚をつかって体験してきたことが、6-12歳では「幾何」や「数」「美術」など、様々な分野に応用して使われていきます。
個人のファイル(右上)や、数教具の棚です。
地理や、宇宙や、歴史など3-6歳のクラスで、「文化教育」と呼ばれていた分野の活動が、さらに発展したものがたくさんあります。
科学・実験
科学や実験の活動の教材の棚。試験管や、ビーカーや様々な粉などが置いてあります。
一日の計画がかかれているホワイトボード
この環境で、子どもたちは何を手がかりにお仕事するのでしょう?
実は日々のスケジュールと課題がホワイトボードに書いてあるので、それを見ながら自分でその日に何をするべきか決められます。
朝は、このスケジュールを見ながらまずここで、自分のノートに計画を立てている様子が見られました。
数
小学生になると、抽象の過程が進み、ほとんど具体物の助けをなしに、計算をします。勿論、まだ具体物も助けになります。ある子は「切手遊び」を使いながら計算の答えを確かめていました。
お気づきになりましたか?計算用紙に、定規を使って幾何のようなデザインをしています。手を動かして、何かを描くのも大事な作業の一つです。「らくがきしないで、計算に集中しなさい!」と言う先生はいません。
子どもたち(特に男の子たち)が、図形の絵を描く時に、大人気だった定規。鉄製はめ込み(メタルインセット)でやってきたことが、ここにつながっていると思いました。
こちらの生徒は、「分数」の教具を使って、紙を切って、それで形をデザインして紙に貼り、絵を描いています。
「分数」→「幾何」→「アート」という風に連動しているんですね。
お友達と一緒に活動しています。
美術
名画を見ながら、模写しています。
ある男の子は、船の絵を描いていました。
言語の棚
中国語の言語の棚です。
漢字の部首の教材!
漢字をなぞる教材。
漢字
ある8歳の男の子たちは、興味のある漢字を自分で調べていました。
漢字の成り立ちや文例など。「全員一緒に同じ漢字!」ではなく、自分の興味に沿って進めていけます。
英語
英語も学んでいます。英語と中国語を対比させて、絵を描いたもの。
歴史
モンテッソーリの小学校では、先生は「良い語り手」となって、子どもたちの世界と興味を広げることが大切です。
今日のお話は「人類の歴史」。それが長いタイムラインになっている絵を見せながら、人類のたどってきた歴史と進化のお話をします。子どもたちは熱心に聞きいっていました。
生物学
生き物について学べる棚。
蛇に興味のある11歳男子は、蛇の絵を描いて、切り取って色塗りをしていました。
図鑑で調べた蛇そっくりですね!
植物学
植物について学べる棚。
地理
ある10歳の女の子は、アフリカについて調べてまとめています。
こちらは地理や歴史の棚です。
エジプトのもののミニチュア。
エジプトのものその2
世界の遺跡でしょうか?
音楽
6歳までは音感ベルでしたが、「トーンバー」(ピアノのようなもの)という音楽教材がありました。他にも色々な楽器が置いてあります。
給食
ある日の献立。実はこの大皿の野菜は、給食当番の子どもが作ったもの。
友達が作ってくれたものを、各自がおうちから持ってきたお茶椀によそいます。
給食当番の2名がつくったのは、副菜とスープとデザートとご飯。
デザートはパイナップル。よくこんなに切りました。
台湾のこちらのモンテッソーリの小学校では、毎日が調理実習です!
外遊び
お庭がないため、運動のために近くの公園へ出かけます。
台湾では「ローラースケート」が一般的なようで、この日は外部から先生を招き、午後、公園で一時間以上ローラースケートの授業!!
台湾では「公園はみんな何をしても良い自由なところ」とのことです。1時間以上ローラースケートのレッスン大々的にしていても、周囲の住人たちも、あたたかく見守っていました。
それにしても小学生のエネルギーはすごいです。1時間以上ずっとローラースケートをしてもまだ、エネルギーがあまっているようでした。
図書室
静かに本をよむスペースもあります。
窓の部分がみんなのお気に入りの読書スペース。
好きな場所で本を読む自由があります。
おわりに~訪れた感想
モンテッソーリの小学校は、先生が黒板の前に立ち、一方的に教える授業ではありません。6歳までの環境と同様に、整えられた環境とトレーニングされた先生の元、自分たちが主体となって学んでいきます。
先生はいますが、良い意味でパトロールしているだけで、一日を、どのように過ごしていくかは自分で決めることができます。
でも、勿論何でもやりたい放題やっていいわけではありません。「いついつまでにやるべきこと」ということも決まっています。それは先生は実は綿密なレッスンプランを立てていて、どの子どもに「いつ」「何を」提供して、「どのように」導いていくかを計画しているからです。
その計画は、1年単位から、1か月ごとに、そして一週間ごとへと細分化されていて、その計画の中で子どもたちに新しい活動を提供し、個々を導いています。
子どもたちは、それを頭に入れたうえで、「あの数のお仕事は来週までだったから終わらせないとな、じゃあこの、やりたい絵を描くお仕事を午前中やったら、午後数を終わらせよう」などと段取りをたてて、自分で決めて行動しているのです。
また、子どもたちが活動する姿は、前にも述べたように、「できる社員が集まっている、オフィス」のような雰囲気。上司があれこれ指示することもなく、あるプロジェクトに対して自分で考え、自分で行動して、自分で調べてたりまとめたりプレゼンしたりしています。個々ですることもあれば、グループですることもあります。先輩は後輩を助け、後輩は先輩を尊敬して一緒にプロジェクトを終わらせます。
こういう環境で6年間を過ごした子どもが、将来社会に出て、いきいきと主体的に責任感をもって仕事をしている姿。日本でもこれから必要な人材像、そのものではないでしょうか。
(取材、写真、文:あべようこ)
Taipei Utopia Montessori Elementary School 滿兒圓小學自學團體
住所:No. 19-1, Aly. 20, Ln. 300, Sec. 4, Ren’ai Rd., Da’an Dist., Taipei City 106, Taiwan (R.O.C.)
電話番号:02)27017775
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