モンテッソーリ教育を受けた子ども達が実際にどんな風に成長するのか、小さな子どもを持つパパやママの気になるところ。
イタリア在住のモンテッソーリ教師、綿貫愛香先生は、本場イタリアで0歳~12歳まで、家庭でも、学校でも、子どもに一貫してモンテッソーリ教育を与えました。
その効果を今どう実感しているか、マリアーニ・綿貫愛香先生にお話を伺いました。
(マリアーニ・綿貫愛香先生)
マリアーニ・綿貫愛香先生プロフィール
モンテッソーリ教育で、自分勝手になる?
– モンテッソーリ教育を受けさせると、「将来自分勝手な我慢できない子になるんじゃないか?」と心配される方がいらっしゃいますね。
「それ、本当は全く逆なんですよ!モンテッソーリ教育では、子どもを自由にさせていると思われていますが、その自由は、放任主義的な自由ではありません。モンテッソーリの環境は、ある意味で制限が明確です。例えば園では、教具は定位置にあり、終わったら元の場所に戻す。これは他者への配慮です。各分野の教具も一つずつしか置いていません。これは待つことを学ぶためです。そのように社交性も育ちますから、みんなと協力することを学びます。競争ではなく、調和を学ぶのです。自分も尊重されているため、他者も尊重できるようになります。」
(綿貫先生のご愛息ジョエレくん)
自分の管理ができる子どもに
– 実際、ご自身のお子さんに本場イタリアで小学生までモンテッソーリ教育を受けさせてみて、その後どのように感じていますか?
「素晴らしいですね。誕生してから、家庭でも園でも12歳まで一貫してモンテッソーリ教育の環境を与えてきました。
(綿貫先生のご愛息ジョエレくん)
それは月齢にあった自立を促す環境です。人格を尊重され、自由選択がある。そのような環境にずっと身を置いた結果、大人に管理されない、自分で自分の管理ができる、自立した個人になったと思います。勉強も自分で時間の配分を決めて行うので、『何々しなさい!』と言ったことがありません。言う必要がないのです。読書も好きな子どもに育ちました。
今はイタリアの中学校2年生です、宿題も全て自分で管理します。大人に何か言われなくても、自分のやるべきことを自分で把握できており、責任がとれる。意思が強く、自分の意見を述べることができる。個の確立がはっきりしていると感じます。それは、モンテッソーリから得たものです。」
適応はむしろスムーズ
「息子はモンテッソーリの小学校を卒業しましたが、面白かったのは、中学校1年生の時に、モンテッソーリの小学校時代に自分でつくった文法の小冊子を実際に使いながら、一人で宿題をしていたこと。こうやって生きてくるんだなあ、すごく面白いなあと思ってみていました。そして、物事を秩序立てて考えて、これから先に起こることを推測するのが得意です。整理するのも好きです。内的な秩序感がある。そういう力はモンテッソーリ教育から得たものだなと、息子を見ていてつくづく感じています。」
(綿貫先生のご愛息ジョエレくん)
「息子を見ていると、12歳までモンテッソーリの自由な環境にいて、普通の中学校に入り、適応できるか、親としては少しだけ心配な気持ちもありましたが、普通のイタリアの教育システムへの進学は何も問題がありませんでした。12歳までにしっかり自我ができ、また、グループでの活動も経験してきましたから、適応はむしろスムーズで大変ではなかったです。」
発達の4段階で子どもが求めるもの
発達の4段階
「モンテッソーリは、人間の発達を、0歳~24歳まで4つに区切って考えました。各段階の子どもの成長や求めているものは全く違います。ここでは各段階のスローガンを、発達の4段階に分けて、0歳~24歳までみていきたいと思います。」
各年齢のスローガン
◆0-6歳・・・自分でできるように手伝ってください。
「自分で決断をして、選ぶ。手と心と頭を使って、『自分でできた!』と感じられるような環境を徹底して用意します。そこで得られるものは、自分自身への信頼であり、揺るがない内的な土台。自己肯定力は、日々の積み重ねで築いていくものです。」
(綿貫先生のご愛息ジョエレくん)
◆6-12歳・・・自分で考えられるように手伝ってください。
「この時期は、『自分でできるように手伝ってください』から『自分で考えられるように手伝ってください』というものに変わってくるんです。誰かの考えではなく、自分の考えです。受け身ではなく、自分で想像して自分で構想して、行動する。そして文化に対する敏感期も、この時期にあるように思います。こうやって、12歳までは、まわりと助け合いながらも、しっかりとした個としてのユニークさを伸ばして、自我をつくっていきます。」
(Montessori Bilingue Milanoの小学生クラス)
◆12-18歳・・・あなたと、共に、できるように手伝ってください!
「思春期は、社会の中でもう一度、個としての自我が生まれる、ルネッサンスのような『再生の時期』です。思春期のスローガンでいう“あなた”とは、家庭や社会など自分の外の世界。家庭の外の社会や環境、それらと協力をして豊かに共存できるように、子どものまわりの環境を大人が変えていきます。でも、そこに到達する前に、まずはしっかりとした自我を確立していなくてはいけないんです。」
◆18- 24歳の成熟期・・・あなたのために、できるように手伝ってください!
「最終的には、『あなたのためにできるように手伝ってください』という風に発展していきます。自分が満たされているとき、人は誰かのために貢献したい、と思うようになる。
自立した態度で、皆と協力して、より平和的な解決を見出していく個人というのは、まずは自分自身が満たされている人です。自分が満たされていると、他者にも手(能力・可能性)を差し伸べることができる。
あなた、という相手は特定の1対1の関係かもしれないし、家庭かもしれないし、学校や社会かもしれないし、もっと広がると地球規模の環境につながっていきます。」
世界でたった一人の私をつくる
「従来の教育法とモンテッソーリ教育とは、出発点が違うと思うんです。従来の教育法では、まず子どもは受け身で知識を持った大人から知的課題を与えられるべき存在です。
でもモンテッソーリでは真逆の道を進みます。『子どもの発見』がまず第一にあるからです。主人公は子ども。教科書も時間割も通信簿もありません。教師は、一人一人の子どもの発達に寄り添い導く存在です。更に自分で自分の教科書もつくるので、ノートを大事にします。誰一人同じものを同じ時にしていません。『世界でたった一人の私』が出来上がっていくのです。」
(綿貫先生のご愛息ジョエレくん)
「そのような環境に身を置けば、学ぶことが大好きになります!強制されていないので、子どもたちは目を輝かせ、黙々と作業をしています。見学者はこの現実に驚きます。もちろん、社交性も育ちます。しっかりとした自我をもって、自立して、社会の中でまわりと協力して生きていくことができるんです。」
– マリアーニ・綿貫愛香先生、ご自身の子育ての効果や、発達の4段階のスローガンを教えて頂き、ありがとうございました!
次回最終回は、愛香先生とモンテッソーリ教育の出会い、そして想いをお伺いします。
【マリアーニ・綿貫愛香先生 関連サイト、書籍】
・綿貫先生のブログ「Montessori from Italy イタリア発 モンテのこころ」
・Facebookページ「Montessori from Italy イタリア発 モンテのこころ」
・Facebookページ「モンテッソーリ教育 Montessori Education」
・「イタリアざんまい」(綿貫先生がイタリアで働く日本人として紹介されています。)
・クレヨンハウス出版「クーヨン」(綿貫先生のイタリアでの子育てが特集されています。)
お知らせ
イデー・モンテッソーリでは、モンテッソーリ教員資格者の求人情報の案内も行なっております。資格をお持ちで仕事をお探しの方は、是非ご覧下さい。
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