子どもの家って何?
モンテッソーリ教育に関心を持ちはじめた方からの質問で
「子どもの家って何ですか?」
というものがあります。
モンテッソーリ教育を調べ始めると、まず耳にする言葉でしょう。
また、どこかで「子どもの家」という看板を目にしても、何をしているところかわからず、通り過ぎている方もいらっしゃるかもしれません。
「子どもの家」というのは、何か母体のある系列組織なのでしょうか。
それでは、そんな疑問にこたえるために、その歴史からみていきましょう。
【目次】
1. 「子どもの家」って何?
・世界初の「子どもの家」
・「子どもの家」では何をしているの?
・モンテッソーリ実践園は「子どもの家」だけではない
・日本にはどんな「子どもの家」があるの?
①認可外保育施設
②認可保育園
③幼稚園
④お教室として
②インファントコミュニティまたはトドラー(1歳半頃〜2歳頃)
世界初の「子どもの家」
1907年 イタリアのローマのスラム街、サンロレンツォにて、最初の「子どもの家」が、モンテッソーリ教育の創始者マリア・モンテッソーリによって開かれました。当初、約60名ほどの子どもたちが、保育園のように通っていたそうです。
その「子どもの家」について、マリア・モンテッソーリ は次のように述べています。
『わざわざ子どものために作られた環境』
『そこでは子どもが主人』
『家庭的設備は大人のためのものではなく、子どもの要求に適する物であることが特色』
(マリア・モンテッソーリ『私のハンドブック』)
子どもの家とは、それまでの教育施設とは違い、「全てが子どものための場所になってほしい」というモンテッソーリの願いが込められたネーミングであると考えることができるでしょう。
「子どもの家」では何をしているの?
その後、“幼児に対してモンテッソーリ教育を実践する施設”のことを、この最初の子どもの家にちなんで、世界中で「子どもの家」と名付けるようになったと考えられます。
「子どもの家」という名称を利用する際、特に許可が必要なわけではないため、お互いに関連していたり、系列組織であったりというわけではありません。
それぞれの園がモンテッソーリ教育への想いをこめて、独自に運営しています。
(静岡:「松浦学園モンテッソーリ子どもの家」)
※「松浦学園モンテッソーリ子どもの家」園長へのインタビューは、こちらをご覧ください。
モンテッソーリ実践園は「子どもの家」だけではない
幼児に対してモンテッソーリ教育を実践する施設のことを、「子どもの家」と呼ぶ(名づける)一方で、子どもの家という名前がついていなくても、モンテッソーリ教育をきちんと実践しているところはたくさんあります。
(○○幼稚園、○○保育園、○○モンテッソーリスクールなど )
また、逆に子どもの家という名前がついていても、モンテッソーリ教育とは全く関係のないところもあるようです。
日本にはどんな「子どもの家」があるの?
日本全国に約700か所あるモンテッソーリ教育実践施設の中で、「子どもの家」という名前のところは約40か所あります。
(2018年9月12日現在 イデー・モンテッソーリ調査)
以下のように大きく分類することができます。
モンテッソーリ教育を知る人が「子どもの家」と耳にしたときに、一般的に思い浮かべるのが、このタイプではないでしょうか。
モンテッソーリ教育の資格者が、一軒家などを使用して小規模な幼稚園を開かれているケースです。
その際、補助金などを受けずに認可外保育施設として運営されるケースが多く、その場合は、保育士資格とモンテッソーリの教師資格を持つ先生方によって運営されています。
子どもたちは、一般的な幼稚園のように、週5日の日中をモンテッソーリ環境の中で過ごします。
(京都:「深草こどもの家」)
※「深草こどもの家」の詳しい様子は、こちらをご覧ください。
認可保育園でモンテッソーリ教育を導入している所が、「子どもの家(チャイルドハウス)」と保育園名につけているケース。
(茨城:「ちゃいるどはうす 小さなおうち」)
学校法人などが運営する幼稚園で、モンテッソーリ教育を導入している所が、「子どもの家」を園の名前につけているケース。
週に1~数回、短い時間でもモンテッソーリ教育を受けたい子どもたちのために開かれたお教室が「子どもの家」の名前をつけているケース。
未就園児や、幼稚園児が降園後に通い、モンテッソーリ教育の環境の中で活動することができるようになっています。
(東京:「久我山こどものいえ」)
「子どもの家」の様々な呼び方 ~表記の仕方~
「子どもの家」には、様々な書き方があるようです。
日本での呼び方
・子どもの家
・こどもの家
・子供の家
・こどものいえ
・チャイルドハウス など
英語やイタリア語での呼び方
英語では
・チャイルド・ハウス(Child House)
・チャイルズ・ハウス(Child’s House)
・チルドレン・ハウス (Children House)
・チルドレンズ・ハウス (Children’s House)
イタリア語では
・カサ・デ・バンビーニ (Casa Dei Bambini)
などと呼ばれています。
(アメリカ・サンディエゴ:「MISD Children’s House」)
※「MISD Children’s House」の詳しい様子は、こちらをご覧ください。
「子どもの家」以外の呼び方
3歳~6歳の幼稚園児にあたる幼児が通うのが「子どもの家」です。それでは他の月齢の子どもが通うところは、モンテッソーリ教育ではなんと呼ばれるのでしょうか。
未歩行児の赤ちゃんのクラスのことを、モ4テッソーリ教育ではニド(巣)と呼んでいます。
環境には、はいはい、つかまりだち、伝い歩きなどの練習ができるスペースが用意されていて、赤ちゃんたちが安心して過ごせるよう工夫がしてあります。
(茨城:「ちゃいるどはうす 小さなおうち」)
②インファントコミュニティ(IC)またはトドラー:1歳半頃〜2歳頃
歩き始めた1歳半頃~2歳頃までの未就園児の通う場所のことを、モンテッソーリ教育では「インファントコミュニティ(小さな子どもの共同体)」または「トドラー」と呼んでいます。
「日常生活の練習」や「言語教育」「指先を使うお仕事」「アート」などと呼ばれる分野が主になっています。
(アメリカ・サンディエゴ:「Beth Montessori」)
※「Beth Montessori」の詳しい様子は、こちらをご覧ください。
③子どもの家・カサ(Casa)・プライマリー (Primary):3歳〜6歳
3歳〜6歳の幼児たちの通うところ。
モンテッソーリ教育の5領域の活動「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「数教育」「文化教育」が揃ってます。
(茨城:「ちゃいるどはうす 小さなおうち」)
(アメリカ・ポートランド:「The Portland Montessori School」)
※「The Portland Montessori School」の詳しい様子は、こちらをご覧ください。
モンテッソーリ教育の小学校課程は、6-9歳、9-12歳の2クラス、または6-12歳の1クラスの縦割り(※)で運営されています。
※年齢別にクラスを編成する「横割り」とは違い、1つのクラスを年齢の異なる子どもで編成する形態。
それまでとは違い、「幾何」「算数」「言語」「科学」「生物」「歴史」「地理」など幅広い分野を、お友達と共に学習していきます。
(イタリア・コモ:「Scuola Montessori Como」)
※「Scuola Montessori Como」の詳しい様子は、こちらをご覧ください。
モンテッソーリ教育の中学校は「アードキンダー」と呼ばれています。”大地の子”という意味です。
緑豊かな農場で、動物の世話や畑の世話もしながら、多感な時期を自然に触れて過ごします。
(アメリカ・メリーランドにあるアードキンダー)
※アードキンダーに関するインタビュー記事は、こちらからご覧ください。
全国のモンテッソーリ実践園リスト紹介
いかがでしたでしょうか?
「子どもの家」の名前がついていないところでも、モンテッソーリ教育を実践されている所はたくさんあります。お住まいの近くにあるところを、是非ご覧になってみてください。
【モンテッソーリ実践園のリストのあるウェブサイト】
(文:あべようこ)
お知らせ
2021年2月19日(金)より、モンテッソーリ教育の現場を“観察”したドキュメンタリー映画『モンテッソーリ 子どもの家』が、新宿ピカデリー、イオンシネマほかにて全国公開されるそうです。
モンテッソーリアン必見の映画です!是非ご覧ください。