前回は、モンテッソーリ教育の「トイレットラーニング」の持つ意味や始める時期等についてご紹介しました。
今回は、それが実際にはどんな風に行われるのか、具体的に見ていきましょう。
トイレットラーニングの進め方
①タイミングを知る
まずは、子どもの排泄のタイミングを把握しましょう。
- どのくらい間隔が空いているか?
- 昼寝明けや食後など、特に排泄しやすいタイミングはあるか?
布のパンツを十分に用意し、濡れたら替えます。
②トイレに誘う
だんだんタイミングが掴めてきたら、それに合わせてトイレに誘います。その際、「トイレ行く?どうする?」などと子どもにゆだねるような言い方は、必要ありません。ある程度大人が主導権を持ち、毅然とした言葉かけをしましょう。
「さぁ、トイレに行く時間ね」「寝る前にトイレに行きましょう」など、行くのが当たり前の事というように伝えます。
③大げさに褒めない
うまくトイレで排泄できた時も、大げさに褒めたたえたり、ご褒美をあげたりする事はありません。トイレで排泄することは、人間にとって自然なことであり、子どもは自分のためにそれを学んでいるのです。大人はただ穏やかに落ち着いて、子どもを信じて見守り、必要な手助けをするだけで十分です。
どの子も必ず最後には、「自分で尿意(便意)に気づき、トイレで排泄する」という事ができるようになりますが、そこに至るまでの道のりは十人十色です。すぐにできるようになる子もいれば、1年以上かかる子もいます。スムーズに進む子もいれば、嫌がってなかなか進まなかったり、進んだと思ったらまた戻ったりする子もいます。子どもの発達のペースには個人差がある事をよく理解し、リラックスして気長に付き合いましょう。
トイレットラーニングに必要なもの
布おむつ/紙おむつ
モンテッソーリ教育のトイレットラーニングでは、布おむつが推奨されています。赤ちゃんは、排泄するときに、「今自分の体の中で何かが起こったぞ」という違和感を覚えます。布おむつなら、その赤ちゃんの違和感に対して、「おむつが濡れてお尻が気持ち悪い」という結果がついてきます。その繰り返しにより、赤ちゃんの排泄の認識が育っていきます。
ですが紙おむつの場合、排泄した瞬間におむつはサラサラに乾いた状態になります。赤ちゃんがせっかく感じとった違和感に対して、何の結果も残らないのです。
とは言っても、「布おむつは大変そう」「もうずっと紙おむつで育ててきてしまったわ」という方も多いことでしょう。常に布おむつを使用するのが難しければ、家にいる時だけ、余裕のある時だけ、などでも構いません。
また、紙おむつに小布を引いて、濡れた感覚を感じられるようにする事もできます。それも難しければ、紙おむつでもとにかく濡れたらすぐ替える事、そして毎回「おしっこ出たね」などの言葉かけをする事でも、排泄の意識が育ちます。
おまる/補助便座
子どもが使用するトイレには、おまると補助便座があります。補助便座とは、大人用のトイレの便座に乗せて、子どもが落ちないように用を足せるものです。これはどちらのタイプでも構いませんが、どちらにしても「子どもが自分でまたがって用を足せるか」という点を考えましょう。補助便座を使うなら、自分で登れるように踏み台が必要になります。1歳頃だと、おまるの方が子どもが自分でまたがりやすいかもしれません。
<例>(IKEAのおまる LILLAおまる グリーン¥ 499(税込))
もし、まだ腰のすわる前の赤ちゃんにおまるを用意するなら、「ホーローおまる」というものあります。ホーローはにおい移りがしにくくさびにくい。また、小さな赤ちゃんでも座りやすい形状、というメリットがあるようです。
<例>(野田琺瑯製の琺瑯おまる 一般価格 ¥5,540~(税抜))
布のパンツ
市販のトレーニングパンツでもいいですが、ゴムが固くて子どもが着脱しにくいものが多くあります。また、防水加工をしてあるので、夏は蒸れやすかったり、尿を吸収しすぎて結局おむつと変わらなかったりという問題点もあります。
例えば、『子どもの道具や』というお店では、「エコニコパンツ」というトイレットラーニングに適したパンツが売られています。これは、子どもが着脱しやすいように、ゴムが緩くなったパンツです。足口のゴムも緩いので、おしっこが足を伝って垂れてきますが、それも「濡れて気持ち悪い」という感覚を育てるのに大切な経験です。
綿100%の肌に優しい素材で、モンテッソーリ教育の保育園等でも採用されています。
( 子どもの道具や エコニコパンツ 価格 ¥700(税込))
http://kodomonodouguya.com/products/detail.php?product_id=41
着脱しやすい衣服
そしてトイレットラーニングの時期は、子どもにとって着脱しやすい服を用意してあげる事もとても大切です。固いズボンや上下がつながった洋服は避け、子どもの「自分で着たい!脱ぎたい!」という気持ちをサポートしましょう。
ぴったりとしたタイツやスパッツよりも、ジャージのようなゆったりしたズボンが、着脱しやすくてお勧めです。
例えばオーバーオールは、一人での着脱がとても困難な服
トイレットラーニングの環境づくり
トイレットラーニングの環境を整える上で、最も大切なのは、「子どもが自分でできる」ということです。これは、排泄そのものだけでなく、排泄の前後も含めた一連の流れすべてを含みます。
つまり、
- 自分でズボンとパンツを脱ぐこと
- トイレまで歩いて行って用を足すこと
- 濡れたパンツを片付けて新しいパンツを用意すること
- 手を洗って拭くこと、などです。
(子どもが自分でできる環境の一例)
・高さ16cmくらいの椅子(着脱しやすくなる)
・おまる、または便器
・汚れたパンツ入れ
・換えのパンツが置いてあるかご
最後に
モンテッソーリのトイレットラーニングは、子どもの自然な発達に寄り添った穏やかなものです。時間はかかりますが、焦らず気負わず、子どもの「自ら育つ力」を信じて手助けしましょう。
(執筆者:伊藤久美子 / AMI0-3歳レベル、日本モンテッソーリ教育綜合研究所3-6歳レベル資格者)
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