アメリカのポートランドにある、AMI認定園「Puddletown School」のアドミニストレーター、アンドレアさんに話を伺いました。
(Puddletown Schoolのアドミニストレーター Ms. Andrea Ludlowさん)
– まず、この学校の歴史を教えて頂けますか?
「AMIの3-6歳のモンテッソーリ教師資格を持つ、サムと私の二人で2004年にこの学校を始めました。3-6歳の1クラスからのスタートです。そしてこれまでに3クラスに増え、小学生のクラスもできて、学校は大きくなりました。」
– 現在は何人いますか?
「3-6歳が3クラス、小学生が1クラスで、各25人。全体で約100名います。」
– 最初はサムと一緒に3-6歳を教えていたのですよね?今もクラスを持っていますか?
「いいえ。今は先生をまとめ、学校全体の運営をしています。」
AMIの認定を受けること
– こちらは、AMIの認定を受けていますよね?
「学校としてAMI(国際モンテッソーリ協会)の認定を受けるのは、とても素敵なことです。2年に一度AMIの担当者が来て、2日間学校を観察してくれます。そして、全ての教師と会って話してくれます。先生たちにとっても、外部の方からフィードバックを得られるのはとても良いことです。
『批評をされる』ということではなく、真に『どうしたら良くなるか』『どんなところが良いか』ということを真剣に話し合うのです。」
– どのようにしたら、認定園になれるのですか?
「我々も新しく学校をはじめ、教師はAMIの資格を持ち、認定を受けるレベルの教育をやっていると思いましたが、地盤が固まるまで7年ほど待ちました。それから、満を持して『認定を受けたい』とAMIに連絡をしたのです。
認定を受けるには様々な項目をクリアしなくてはいけません。例えば3-6歳クラスでは、3時間のお仕事の時間があること、クラスが大人数であること、AMIの資格者の先生がいること、生徒全員が週に5日間来ること、全ての教材教具が揃っていることなど、それらを満たしていないとなれません。最初にAMIの方が来た時は、『○○クラスに何々がないね』等と細かく言われました。」
– 12年間モンテッソーリスクールを運営してみて、「良いモンテッソーリスクール」であるためにはどんなことが大事だと思いますか?
良いモンテッソーリスクールであるために必要なこと
「まず大事なのは、以下の4つです。
1. 大きなグループ(集団)。
3-6歳なら、1クラスに子どもが24名以上いること。
2. 縦割りの異年齢保育。
1クラスにそれぞれの年齢の子どもが、同じくらいのバランスで存在することが望ましい。
(2歳半-3歳:8人、4歳:8人、5歳:8人等)
3. 教材教具が全て揃っていること。
4.トレーニングを受けた教師。
この4つは外から見た大事なものですが、それと同時に、目に見えないものでは『子どもが愛されていて、あたたかい場所だと感じられる』ということも大事です。
そして、先生達は、柔軟で、忍耐強く、複数の仕事を並行してこなせる能力が必要だと思います(笑) 」
先生のやる気を保つ方法
– 時に、先生はあまりにも忙しすぎてイライラすることもありますよね。忙しく求められることも多い先生方を、どのようにマネージメントされていますか?
「そうですね、いろいろなやり方ができると思います。ジョークを言って明るくしたり、フレンドリーにあたたかく接したり。今日はたまたま『スタッフ感謝デー』でした。」
– 「スタッフ感謝デー」とは、何をするんですか?
「生徒の父兄が集まって、教師やスタッフ全員にバッグをくれます。その中にはお礼状やらチョコレートやら、そういった父兄から先生達への贈り物がたくさん入っています。そして父兄は、先生やスタッフにランチをつくって持ってきてくれるので、皆で頂きました。
そのようにしてコミュニティをうまく利用し、先生たちに『自分たちは感謝されている』ということを伝えるんです。」
– ご父兄からも感謝されていると、先生が実感できる日なんですね。
「他にも、ジョークを言うもよし、ワインやボーナスをあげるもよし。とにかく、彼らに『感謝されているんだよ』ということを色々な方法で伝えるんです。
日本ではどうかわかりませんが、アメリカでは、モンテッソーリの先生というのはそんなにたくさんのお金をもらっている訳ではありません。だから、とにかく言葉やプレゼントや、あらゆる手段でサポートをして、彼らを明るく保ちます。そして経営者として、先生たちが何か困ったときに相談に来られる場所をつくるようにしてきました。
そして気が付いたんです!先生たちへのサポートやサービスに努めると、先生たちからの要求はより少なくなると。何故なら自分たちの後ろにサポートがあると知り、安心して仕事ができるようになるからです。」
– なるほど、子どもと同じですね。そして先生方も、愛されていると感じながら働けると、子どもにも同じように接することができますね。
モンテッソーリの“愛”について
「ジニ・サケットという素晴らしいAMIの認定トレーナー(2017年までMontessori Northwestというトレーニングセンターの3-6歳の教師養成を行っていた)が、この学校に来て色々なことを教えてくれました。その中でよくこんなことを言っていました。
” It is so important in the classroom to have high warmth and high control.”
(クラスには、沢山のあたたかさと強いコントロールの両方があることが、とても大事だ。)
もし愛が低くてコントロールが高ければ、それは厳しすぎてしまいます。
もし愛が高くてコントロールが低ければ、子どもは誰もいうことを聞きません。
だから、クラスには両方必要なんです!子ども達は、そこに自由と規律があることを知り、何でもやりたい放題できるわけじゃないんだと理解する必要がある。でも先生はそこにいて愛してくれていて、自分が最高の自分になれるように助けてくれる存在なんだと分かっていくんです。」
「モンテッソーリ教育は、コミュニティや社会の一部になる方法を学び、どうやって他の人を尊敬するかを知る教育法です。数や読み書きを知るためだけのものではありません。そして、他人を尊敬するということは、必ずしも列に並んだり、静かにするということではありません。『だれかに親切にする』ということです。
だから、先生もそのモデルにならなくてはいけません。あなたが、子どもや他人に親切に思いやりを持っている姿を見せれば、子どもはそれを学んで社会にもっていきます。
ここでやっているのと同じことを、子どもは外でもします。ここで他人のためにドアを押さえている子は、スーパーに行っても知らない人のためにドアを押さえるでしょう。」
外環境について
– 最後に、ここの素晴らしいガーデニングの環境について教えて頂けますか?
「ここの外環境では、外担当のAMIの資格者のモンテッソーリの先生が、8時半から11時半に毎日来ます。お庭が彼女のクラスです。決まった子どもの担任というわけではなく、全ての子どもがここに来て活動して良いのです。
子どもたちと園芸を始めて3年目ですが、とても素晴らしいですよ。玉ねぎ、ラズベリー、沢山のお花、いろいろと育てています。」
– なぜはじめたんですか?園芸が盛んな街、ポートランドだからでしょうか?
「子どもの様子を見て、子ども達にもっと『外環境での時間』が必要だと感じたからです。秋になると、イチジクやラズベリーや、キウイ、ブドウなど、ありとあらゆるものが収穫できるんです。」
外活動が子どもにもたらすもの
「子どもが外でのお仕事をすれば、自然や天候、汚れ、季節の変化、虫など様々なことに触れることができます。
そしてまた、子どもたちの粗大運動の発達のためにはより広い空間が必要ですから、外での活動ができることは、大きな利点なのです。
ガーデンをつくるときには、食べられる植物、この地域に根付いたもの、お世話がしやすいもの、色が鮮やかなものなどをポイントに植物を選んでいます。」
– 具体的にはどんな活動をしていますか?
「子ども達は、雑草を抜いたり、収穫をしたり、収穫したものを使って食の活動をしたり、ハーブをすり砕いたり、お花を切ったり、虫や土の中に住む生き物の観察をしたり、通常考えられる、水やりや種を植える以外にも、実に様々なことをしています。
そしてまた他にも、外でお茶をつくったり、木工をしたり、岩を磨いたり、平均台をしたり、輪投げをしたり、様々なことをします。
外にも日常生活の活動の要素は、実にたくさんあるんです!」
【PUDDLETOWN SCHOOL】
7220 SE César Chávez Blvd Portland OR 97202
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