モンテッソーリ教師の資格とこれからの目標 〜久保純子さん インタビュー③〜


モンテッソーリ教師の資格とこれからの目標

こちらの回では、久保純子さんにお伺いしたお話を、3話に渡ってお届けします。

 

【第1話】久保純子さんとモンテッソーリ教育との出会い

【第2話】モンテッソーリ教育で育った子どもの姿

【第3話】モンテッソーリ教師の資格とこれからの目標 (←今回はこちら)

 

 

二度に渡りお届けしてきました久保純子さんへのインタビューも、最終話になります。

 

今回は、モンテッソーリ教員資格をお持ちの久保さんに、資格取得のお話や、今後の展望などをお伺いしました。

 

モンテッソーリ教師資格を取得するまで

– 前回、モンテッソーリとの出会いをお伺いしました。そこから、モンテッソーリ教師の資格をとるまでのお話をお伺いできますか?いざ資格をとるのに、ハードルはありませんでしたか?

 

 

もともとライフワークとして「言葉と子ども」がキーワードでしたので、子どもたちに携わって、子どもたちが幸せになるような職業についていたいなということは、ずっと思っていました。

 

ですから、『モンテッソーリ?興味ある!じゃあやってみよう!』という感じで、あまり重い腰をあげたというわけではありませんでした。もともとそういう性格で、興味があったらはじめる!というタイプなんです。」

 

– タイミング的にはどんな時だったんでしょうか?

 

40歳位の時でした。勉強したい!という想いがすごいありました。それまでアナウンサーとしてお仕事させて頂いて、色々な人と出会いがあって、たくさん勉強させて頂いたんですが、放出する一方で引き出しが空っぽになっている自分を感じていました。ここで引き出しがもう一回いっぱいになるように勉強してみたいな、という想いがとても強くて。

 

 

それで『じゃあ せっかくアメリカにいるし、今は仕事もセーブしている時期で、こういう機会は人生でもう二度とないかもしれない』と思い、チャレンジすることにしました。アメリカのカリフォルニア州のサニーベールという街にAMS(American Montessori Society)の教師養成トレーニングセンターがあったので通い始めました。」

 

– そこで学んだことで、印象的だったことはありますか?

 

手と感覚と脳

 

驚いたのは、手の感覚(Sensorial)と脳がつながっているということ。『これって、ものすごいことだな』という衝撃がありました。触って、見て、感じて、ということが全て脳に伝達されて、全ての私たちの行動が司られているということが体感できたというのでしょうか。

今まで何となくわかっていたことが言葉として、知識として、きちんと得られたことはとても大きかったと思います。『脳生理学と子どもの行動や能力を結びつけ、敏感期を唱え、百年前にメソッド化したマリア・モンテッソーリさんはすごい!』と心から思いました。」

 

– 今は、小さな子どもの時からテレビやスマホ、タブレットなどの画面を見て過ごす機会が多いと思います。でも、本当は運動器官や感覚を使って学ぶことが、幼い時にはとても大切ですよね。

 

 

ハンズオンで全てに触れるというのが、人間の本来の生まれ持った姿ですよね、きっと。教具にも『つるつる・ざらざら』を比較するものがありましたが、集中しなければ、あの違いって感じられなかったりしますよね。本当に小さいことの積み重ねで私たちは成長し大人になっていくんだな、と一つ一つの学びがとっても貴重で、希少でした。」

 

 

– モンテッソーリ教師のトレーニングはどうでしたか?

 

一年間の教育実習

覚えることもいっぱいあったし、フォルダー(モンテッソーリ教育の理論や提供方法を書いた分厚いアルバム)も作らなくてはいけなくて、とても大変でした。

 

一年かけて理論を学ぶ学科を勉強して、その後の一年間の教育実習は東京のMontessori School of Tokyo(MST)でやりました。毎朝7時半ごろに来て、先生方にあたたかくご指導していただきながら、アシスタントをしていました。MSTで実際に子どもと関わりながら多くのことを学びました。」

 

 

– AMSでは、学科一年、教育実習1年で資格を貰えるんですね。

 

「あとは自分でオリジナルのプレゼンテーション(教具の提供)を考え、撮影したものをオンラインで提出したり、毎日、今日学んだことをリポートにまとめて提出したりしながら、MSTの卒業式まで実習させていただきました。」

 

 

– 子どもとの関わりで何か感じたことはありましたか?

 

子どもって、生まれ月によって一年が全然違いますよね。同じ一年生でも6歳になったばかりの一年生と、もうすぐ7歳になる一年生では驚くほど違います。大人の38歳と39歳はあまり変わらないし、大した能力の変化もないけれど、子どもの一年の爆発的な能力の伸びって、すごいですよね。子どもは各々のペースにあわせて成長していくのが、理想的だと感じました。

 

 

モンテッソーリ教育の『子どもが自分の能力にあわせて、今やってみたい!』と思ったところにあわせられるのは、とても素敵だなと思いました。」

 

 

– モンテッソーリ教育の特徴の一つが異年齢のクラス編成ですが、そういう環境では一斉に同じことを同じ年の人とやって、他の人と比べられる、ということがないですよね。

 

異年齢クラスでの学び

そうですよね。それが本当にいいと思います。本来そうあるべきですし、子どもたちの学び、吸収力も違うし、持って生まれた力も違うし、得意不得意もあるし、例えば運動がものすごい得意な子どもが、その能力をさらに伸ばせたことによって反対に勉学でも自信が持てたりとか、その反対だったり。

 

 

苦手なことばかりやらされていると自信もなくなってしまう。自分が『できる!』という想いに至ることによって、他のことにもチャレンジする勇気や気持ちがわいてくるというのは、モンテッソーリ・メソッドのすばらしいところだと感じました。

 

 

ですから、MSTの3~6歳の縦割りクラスの時も『あーお兄ちゃんお姉ちゃんこんなことをしているのすごいな!』と思いながら、こっちの小さな子たちも頑張るという、目標があるということも良いと思いました。

 

全然違う年齢だけれども『次はこうなるのかな』と一つひとつの作業を積み上げていくという、そういう縦割りもとてもよかったと思います。」

 

– ご家族でアメリカに住んでいる久保さんからご覧になって、これからの日本にモンテッソーリ教育が必要だと感じますか?

 

これからの日本とモンテッソーリ教育

 

そうですね。この教育メソッドって、画一的ではないというか、それぞれがもった能力を生かせる空間だと思うんですよね。それは今まではあまり、日本においては重要視されてこなかったことで、日本ではみんなが、平均的に同じ環境で同じ教育を受けて同じように仕事をして、同じように暮らしていくことが求められていた世の中だったと思うんです。

 

でも今回のコロナしかり、何か打撃を受けた時の『生きる力』って子どもたちそれぞれが持っていないと、今の世の中では『誰かと一緒』『同じペース』では難しいですよね。

 

 

そういった意味でもすごい大事だと思います。また、海外の子どもたちの教育をみると、政治に関しても、環境問題も、コロナも年齢を問わず、誰しもが勉強している、学校でも触れているトピックです。

 

これがあたりまえというか、自分たちの責任で自分たちの社会を作っていくんだという意識を強く持っていると感じます。それはこれからますます求められるのではないかと思います。

 

 

アメリカの大統領討論会も娘二人とも90分間ずっと真剣に見ていました。そういう姿を見ていると、与えられたレールが敷かれた生き方ではなくて、自分たちが開拓していく、世の中の動きを察知して自分で切り拓いていくという力が、生き方を選択していく上で本当に求められていくんだな、ということを体感します。

 

日本においてもそれは例外ではなくて、これからはどんどん変わっていく必要があると思います。」

 

– だからこそ、必要な教育の選択肢の一つがモンテッソーリ教育だと思われるのですね。

 

 

「はい、大きいと思います。自分で考えて、自分で自分を成長させていくメソッドですよね。今こそ一人でも多くの子どもたちがモンテッソーリ教育に触れて欲しいと心から願っています。」

 

– 久保さんがお話ししてくださることで、「モンテッソーリ教育っていう、 教育法があるんだ」と知っていただくきっかけになると思っています!

 

お母さんたちは本当に一生懸命なので、その熱意のアンテナに引っかかることができれば、広がり得る世界だと思うんですよね。教育に関することは、世界共通かもしれないですが、みなとても関心があり、意識が高いと思うんです。

 

 

ですから、モンテッソーリ教育にちょっとでも触れてもらうということが、私はとても大切だと思います。画一的に教え込まれるだけの、本で読まされるだけの世界ではなくて、もっと触って感じて考えてという成長の仕方があるんですよ、ということを知っていただけるだけでも・・・いいきっかけになるのではないでしょうか。」

 

 

– 今後の展望はどうお考えですか?

 

日本にバイリンガルのモンテッソーリ園を!

「本当は2020年の9月からNYのモンテッソーリ園でアシスタントとして働き始めようと思っていました。 これまでは市の取り決めによって、ひとりで学校に行くことができなかった次女も12歳になって行けるようになりましたし、長女も大学生で自立しているので、私自身、再び自分の時間が持てるようになりました。何か新しいことにチャレンジするチャンス到来です。10年周期位でくるんですけど。笑 

 

ゆくゆくは自分のモンテッソーリ園を作りたいとは思っているんですが、自分の鈍っている感覚を研ぎ澄ますためにも、一度教育現場に戻りたいなと思いま した。」

 

 

– 日本でやられるのでしょうか?

 

「日本でやりたいです。せっかくですので、英語と日本語両方の言葉で学べるような、バイリンガルの園を作りたいと思っています。」

 

– ものすごく素敵な園になりそうですね。楽しみしています!

 

(写真左:久保純子 右:あべようこ)

 

久保純子さん、ありがとうございました!

 

取材、文:あべようこ

撮影:ONESTYLE

取材 / 撮影協力:The Montessori School of Tokyo

 


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