モンテッソーリ教育で育った子どもの姿
こちらの回では、久保純子さんにお伺いしたお話を、3話に渡ってお届けします。
【第2話】モンテッソーリ教育で育った子どもの姿 (←今回はこちら)
前回は、久保純子さんとモンテッソーリ教育との出会いについてお伺いしました。
今回は、現在子育てをされている久保さんに、実際にモンテッソーリ園へ通われたお子さんの姿についてお聞きしました。
取材、文:あべようこ
モンテッソーリ教育を受けた子の精神
– 3歳でモンテッソーリ園に入られた下のお子さんは、現在12歳とのことですが、日本に帰国してからはどうされたのでしょうか?
「モンテッソーリの幼稚園は、アメリカにいる間の年少、年中の二年間だけでした。日本に帰ってきてからは、モンテッソーリは途絶えてしまっているんですが、モンテッソーリの精神は脈々と今でも生き続けています!」
– それはどんな部分で感じられるのでしょうか?
「集中力!探求心!それはもう、(モンテッソーリ教育を受けていない)長女と驚くほど違うんです!もちろん本人がもともともっている資質もあるとは思いますが。
驚異の集中力と幸福感
3つ子の魂百までとはよく言いますが・・・あの時触れたモンテッソーリ教育がものすごい大きかったんだと感じます。今も一日、二日で500ページの本を読破していく集中力があります。」
– それはすごい集中力ですね。
「それからオンとオフの切り替えが上手。モンテッソーリってそういうところありますよね。やる時は集中してやって、その後オフにするというか、そういう切り替えがとても上手でうらやましいくらいです。もう 「小さな大人」という感じです。」
– ではそのたった2年間で培ったものを、今でも感じられますか?
「感じますね、大きく感じます。そして、いつも満たされているハッピーパーソンです。モンテッソーリ教育は、基本的にはみんなが体感できるメソッドだとは思いますが、娘の場合は特にぴったりはまったんだと思います。」
– モンテッソーリ園に通っている際の覚えているエピソードはありますか?
培った秩序感と先を見通す力
「そうですね。きっちりお盆を運んだりするのがとても好きでした。整理して、ここにスポンジをおいてって。自宅でも、秩序だてて、お盆の上に何かを置いたり、机の上も整理整頓したり、自分がやりやすい心地よい空間をつくっていましたね。それは3歳から今でもずっと続いています。」
– 順序立てて、段取りをつけられるんですね。
「はい。ですから、今も私がなにか手伝ったりすることはないですね。自分で全部やるので。宿題をする時間、本を読む時間、テレビ見る時間、友達と話す時間など。今まで『勉強しなさい!』『片付けなさい』『ごはん食べなさい』『お風呂入りなさい!』など『○○しなさい!』と言ったことがないです。長女は時折、『急いで~学校遅れちゃう~!』ということがありましたが(笑)
今、日本に帰ってきていてもNY時間にあわせて授業を受けているんですが、夜9時から朝4時までなんです。それも『ママ寝ていいから』と言って、きっちり自分で受けています。」
– アメリカでの二年間の幼稚園生活ももちろん大事だったと思いますが、久保さんご自身がモンテッソーリ・マインドをもって子育てをしてきたことも、きっとすごく影響を与えていますよね。
家庭でのモンテッソーリ・マインド
「それも大きいと思います。私自身がモンテッソーリに触れて学べたことによっ て、小さなことの積み重ねですが、子供のもつ力を信じて、じっと見守る。時間をかけてじっくり彼女が色々な能力を培えるように 『待つ』ようにしました。それから、色々なことを話すようにしています。」
– どんなことを話されるんですか?
「なんでも話します。その時には小さい声で話します。お母さん一年生だった長女の時は怒ったりすることはもちろんありましたし、ダメっていうこともいっぱいありましたが、モンテッソーリを学んでからは、気持ちがたかぶれば、たかぶるほど小さい声になりました。そうすると子どもは耳をそばだてて聞きますよね。
大きな声を出すと、こちらも子供もだんだん興奮してきて、取り止めのないことを言ってしまいますが、静かに話していると激しい言い合いになることはありません。声を荒げることは、娘も私もお互いにありません。」
– それは久保さん自身が「大人の役割」というか「お手本」になっていたからですよね。
子どもと話し合うことの大切さ
「私は見守るだけ、たまたまお母さんとして子を授かったけれども、世の中に送り出す一人の人間を見守るガーディアンのような。『この子を育ててやろう』というよりも、子どもが持って生まれてきた能力を最大限生かすべく、サポートしている感じです。」
– まさに、モンテッソーリ教育での大切な視点ですね。
「毎日帰ってきたら、食事はみんなで、ということも心がけています。娘たちと食卓を囲んで、お互いの体調や、体温だったり、精神的な状態だったりを感じられる場にしたいので、食事の時間を長くとって、色々な話をします。
『今日は何かいいことあった?5つ教えてくれる?』『何か発見あった?』など具体的に質問しながら、話しやすい空間にしています。
小さなこと、『今日はモミジがきれいだったよ』『今日は学校で○○ちゃんがうれしい一言いってくれたよ』とか、そういうことを話し合う場にしてきましたね。だからすごいよくしゃべります。今でも、みんなで。
家でも学校でも、子どもと大人がお互いに色々な考えを伝え、話し合う時間ってとても大事だと思います。 先生が一方的に話すのではなくて、子どもたちが自分の想いを伝えるのってすごい大切だなと。日本の教育現場ではそういった機会を与えられないことが多いと思うので、自分が発言していい場をもつことは、とても重要だと思います。」
久保純子さん、ありがとうございました!
次の最終回では「③モンテッソーリ教師の資格とこれからの目標」をお届けします。
取材、文:あべようこ
撮影:ONESTYLE
取材 / 撮影協力:The Montessori School of Tokyo
(第二話終わり)
第3話は12月17日公開予定です!お楽しみに♪