久保純子さんとモンテッソーリ教育との出会い
こちらの回では、久保純子さんにお伺いしたお話を、3話に渡ってお届けします。
【第1話】久保純子さんとモンテッソーリ教育との出会い(←今回はこちら)
「アナウンサーの久保純子さんが、モンテッソーリ教育の教師資格をとって、モンテッソーリ幼稚園を開園しようと考えているようだ!」そんなニュースが耳に飛び込んできたのは、数年前のことでした。
そしてこの度イデー・モンテッソーリで、アメリカから一時帰国中の久保純子さんへのインタビューを実現しました。
久保純子さんのモンテッソーリ教育との出会いとは?モンテッソーリ教師の資格取得や子育てについて等、詳しくお伺いしました。
取材、文:あべようこ
言葉を通じた出会いや学び
– まず、久保さんとモンテッソーリ教育との出会いから教えて頂けますか?なぜ、モンテッソーリ教師を志すようになったのでしょうか。
「私自身、教育にもともと興味がありました。
それには、ずっと英語の教師をしている母の存在が大きいと思います。母は元アナウンサーで結婚後子どもを出産してから、中学校と高校で英語を教えながら、自ら英語教室も開いて教育の道を歩んできました。何十年も、いまだ現役で教えているんですね。
その影響で、私も子どもの頃から色々な文化や言葉に触れてきました。
小学校時代は、父の転勤でイギリスに行きましたが、全く言葉が分からない中、現地校に入って、英語という言葉と出会い、英語を通して新しい文化、価値観、人々に出会いました。
イギリスの中学ではフランス語が第二外国語でしたので、母の勧めで一人フランスに送りこまれて、ホームステイをしながら語学学校に通いました。高校時代はアメリカに留学して、アメリカの高校を卒業しました。
このように『言葉を通じて人と出会う』ということが私を形成してきました。
それ以来ずっと将来は教師になりたいと思っていたんです。言葉を通して学ぶ、その素晴らしさを伝えていきたいと思いました。」
教師志望からNHKアナウンサーに
– では、もともとは教師を希望されていたんですね。
「はい、でも両親がもともとアナウンサーだったこともあり、もう少し多くの人に届く方法で、教育や言葉の面白さを伝えることができないかな、と考えていました。
大学では教職をとったんですが、そのまま教師にはならず、NHKのアナウンサーを希望しました。教育テレビで、子どものための言葉の楽しさを伝える番組をつくりたいと思ったからです。
そして、10年間NHKでアナウンサーとして仕事をし、その後フリーになりました。結婚して子どもができたことによって原点に戻るというか、『もともと何のお役目を頂いて生まれてきたのかな』と考えた時に『教育だな』と感じました。子どもを育てている『今の母の感覚』を大切にしながら幼児向けの子ども番組を作りたいと思ったのです。随分悩みましたが、一歩を踏み出す決断をしました。」
– お子さんとの日々を描いた著書も出版されていますよね!子育てがまた、本来志望されていた「教育」への道へと導いたのですね。
モンテッソーリ教育との出会い
「子どもの成長過程があまりにも面白くて。そんな中でモンテッソーリ教育の幼稚園に通っていたお子さんに出会う機会があったんです。
上の子が小学校にあがる前後だったのかな、ですから十数年前ですよね。ママ友の中にお子さんにモンテッソーリ教育を受けさせている方がいて、その子どもを見た時にびっくりしました。
『この集中力だったり、探求心だったりはなんなんだろう!』と。」
– 具体的にはどんな感じだったのでしょうか?
「その子は男の子だったんですけど、何か夢中になるとずっと集中してやっていました。子供ですからもちろん元気に走り回るのですが、何かをはじめるとスイッチが入ったように集中する姿が印象的だったんです。」
– 何歳くらいの子だったんでしょうか?
「8歳位だったと思います。そこで初めてそのお母さんに『モンテッソーリの幼稚園に通っていた』ことを聞きました。その子の集中力にまずびっくりした!というところが最初の出会いでした。『どういう育ち方をしたらこうなるのかな』と思って。とても自然体で、誰かにやらされている抑圧された子どもの集中力ではなくて、自らすごい楽しんでいました。本を読んだりすることもそうですし、遊ぶという事に対してもそうですし。そして、とても優しかったんですね。」
– モンテッソーリ教育を受けた子どもの姿に感動して、モンテッソーリ教育に興味を持った、という話をよく聞きます。
「そうですね。そしてなおかつ、グーグルの創始者がモンテッソーリ教育を受けたということを後にアメリカで聞いて『なるほど』と思いました。探求心と言うか、とことんやりぬく集中力はモンテッソーリからきているという話をお二人がしていたので、これは『面白いな!』と。
その男の子がきっかけで。『モンテッソーリ』という言葉を初めて耳にして、『モンテッソーリって何!?』『モンテッソーリ・メソッドって何?』と思いました。」
– 聞きなれない言葉ですし、最初は「何?」となりますよね。
アメリカでのモンテッソーリ教育
「調べ始めるとますます『興味深いな、機会があったら触れてみたいな』と思うようになりました。でも日本では、その頃仕事が忙しく、なかなかそういう機会もありませんでした。
その後主人のスタンフォード大学への留学で、家族でアメリカに行った時に、近くにモンテッソーリの学校があったんです。次女が3歳の時に、モンテッソーリの幼稚園に通わせてみました。」
– いかがでしたか?
「モンテッソーリ園にいざ入ってみると、それまで日本人として教育やしつけを受けた良き日本のそのままがあると感じました。
『椅子をひいたら元に戻しましょう』とか『ごみが落ちていたら、拾いましょう』とか、人と人とが生活するうえで当たり前で、でも当たり前すぎて、気に留めることもなかったような世界がそこにはありました。
『人と人が心地よく生活するうえで、大切な教育がここにはあるな』と思いましたし、3歳になった次女を見てとても感激しました!
例えば、靴のひもを結ぶ時に『お母さん、手伝わないであげて下さいね、ずっと見ていてください』といわれてずっと見ていました。急いでいる時もどんな時も何分も何十分もかけて、ずっとひもを結ぶその過程を見ていて、『これがモンテッソーリなんだ』と思いました。
何かを達成することによって満足な気持ちや独立心が芽生えて、『自分でできる!』という幸福感で満たされて、そして、他の人にも幸福な気持ちを与えたいと思う。どんどん次なるステップにチャレンジしていく。『誰かにやらされているのではなくて自分で育っていく過程が素晴らしいな』と思いました。」
久保純子さん、ありがとうございました。
次回は「②モンテッソーリ教育で育った子どもの姿」をお届けします。
取材、文:あべようこ
撮影:ONESTYLE
取材 / 撮影協力:The Montessori School of Tokyo
(第一話終わり)
第2話は12月10日公開予定です!お楽しみに♪